桔梗(ききょう)


尾形光琳「秋草文様描絵小袖」/「日本のデザイン」第2巻より

尾形光琳「秋草文様描絵小袖」

この原稿を書いているのは7月13日、早いところではもう桔梗の花が咲いている。今年の季の移ろいが早いだけではない。ここ十年、二十年はすっかり真夏の花になっているようである。

だが、桔梗は秋の七草の一つで、江戸時代の琳派の絵には、芒 (すすき) とともに描かれている例を多く見る。今日も近くの宇治川の川辺に群生している芒を見てきたが、まだ穂は出ていなかった。おそらく8月も中頃をすぎないと出てこないであろう。

桔梗の花は、鐘を上にむけたような形で花冠は5つに分かれていて、淡い青紫の色である。私どもの工房では、このような色は藍と紅花をかけ合わせて、「二藍」として染色をする。

梅雨の湿りをおびて、日毎に背が高くなってくる。7月にはいると太陽の強い日ざしが、その葉を色濃くしていく。緑の美しい葉がふれあうように育っていく。

江戸時代の尾形光琳の描いた桔梗図がいくつかあるが、江戸の豪商冬木家のために描いた有名な「秋草文様描絵小袖」は、藍より精製した藍蝋で描いていて、紫系の色は見られない。たらし込みの技法で何気なく五弁の花を描いているが、すばらしい筆はこびで鐘形の立体感が見える。

京都の夏はこれからが本番。早く秋風が吹いてくれる日が来ないかと願う毎日である。

日本のデザイン2: 秋草日本のデザイン2: 秋草
吉岡幸雄 (編集)
紫紅社刊


カテゴリー: 季の文様
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