2011年7月9日(土)〜8月28日(日)、東大阪市民美術センター (撮影: 岡田克敏)
私は、京都において200年余り続く染屋に生まれた。長男であったので、その家を継ぐ事が当たり前のようにして育てられたが、大学を出てからは、その道を好まず、出版広告の仕事をしていた。
歳40歳を過ぎた頃より、家業を継ぐこととなり、父が築いてきた染屋の仕事のなかでも、植物染の仕事を専らとして、今日まで歩んできた。父より受け継いだ東大寺、法隆寺、薬師寺といった古い御寺の仕事を中心に、福田伝士という優れた染師と共に、日本古来の植物染による伝統染織の技を復活し、それを伝承すべく歩んできた。
私共にとって、いにしえの染師の職人が築いてきた手技が何よりも模範であって、それを学ぶ事が仕事の糧となったのである。
歴史ある御寺や神社の年中行事や伎楽などの古典演劇の仕事に携わらせて頂く事が、どれだけ有難い事であるかが、年々経る毎にわかってきた。また源氏物語などの文学に著わされた日本人の色彩感も、読むたびに心うたれるものとなった。
この度、東大阪市民美術センターにおいて、画家である祖父・吉岡華堂、叔父・吉岡堅二、そして、父・吉岡常雄を導入部として、私共の二十数年にわたる軌跡を一堂に展覧して頂く事になり、これまでのお納めした寺社より特別のご配慮によって、皆様にご覧頂く事となった。
こうした私共の仕事は、これでよしとするところはなく、日々努力研鑽して今後へ伝承し、日本の伝統色がいつまでの継承されていくことを願うものである。
(平成23年7月 染司よしおか主宰 吉岡幸雄)